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いちにち! ※そつろん1
 ときどき思うことがある.
 というか,だいたい毎日思う.

 早く室内へと入りたくなる季節,朝日が東から辺りを照らしていようともその暖かさは時折吹く肌を刺すような冷えた風には勝つことはできない.吐く息は白く染まり,もう世間はクリスマスシーズンを意識し始める12月初旬.僕は今日も研究室へと向かう.
 僕の所属するこの地方国立大学,環境システム工学部キャンパスは大学生が華のキャンパスライフを謳歌するには著しくふさわしくない場所に位置している.ただでさえ地方国立ということで,都会では決してないのにさらに中心部から離れたところにあるのである.それはもう,遊びに行くなら車は必須であり,ボーリングやカラオケに気軽には行くことができない,端田舎だ.いまだに僕はクラブやおしゃれなバーに通う学生はフィクションにしか存在しないものだと考えている.しかし遊ぶ場所が少ないからと言って真面目に勉強に励む人間はわずかであり,僕もその例外にもれず抜きに出て優秀なわけではないそこそこの大学生だ.
もしも,都会の大学に行っていたならば人生が変わっていたかもしれない,なんて考えても今はどうでもいい,どうせ僕は今4年生であり,この時期はどこの大学にいようと卒業研究という理系学生ならば十中八九頭を抱えているであろう問題に追われているのだから.
 無駄に広いキャンパスを寒さに耐えながら歩き,川の字状に並列して並んだ研究棟の二つ目である二号棟を目指す.二号棟の三階,西側はしっこに位置するのが僕が勉学に励んでいる研究室,水環境工学研究室,通称『みずこう』になる.
 カンカンと,足音を鳴らして非常階段を登っていく.もう幾度となくこの階段を登ってきたがこのTHE・非常階段であると十人中三人くらいは共感してくれるだろう金属音が目立つ足音が僕は好きだった.

 ときどきというか,毎日思うことがある.
 その思いは大学4年生になり,研究室に所属が決まった時から大きくなった.
 
 三階につき,冷たいドアノブを回してアルミ製の扉を開き棟内に入る,そしてすぐ西側に見える研究室もとい,みずこうである.すりガラス越しに皆がもう来ていることがわかった.朝っぱらから皆の騒がしい声が聞こえる.僕はゆっくりと息を吸い,深呼吸をした.
 今日も一日僕は頑張ろう.
 そう意気込み,僕はドアを引いて開ける.

「おはよう」
 右手を挙げて挨拶をしながら入室する.部屋の中はもう暖房が利いているようで暖かかった.
「お,おはよう」
 僕の同級生の多田がもう席についていて,最初に挨拶を返してくる.
「外寒いよね,今日も」
 次に僕の向かいの席の原咲(これでフルネーム)が抑揚のないで言葉を放つ.
 研究室に所属している4年生はこの僕,多田,原の3人だけだ.今日もいつもと変わらない,朝のやりとりである.
「寒いなー」
 僕はそう返しながら席に着き.先月買いたてのパソコンの電源を入れ,起動を待つ.そして小さくため息をついた.
 今日も一日,頑張ろう.そうさっき意気込んだばかりだ.早々と挫けるわけにはいかない.

 ここにくるとその思いは抑えきることができないものになる.
 どうして,どうして僕はこの研究室に入ったのだろう.
 そして同時に,もう後悔しても遅いのだから精一杯やってやろうというあきらめの境地も生まれる.

「おはようございます,先輩」
 僕は椅子から立ち上がり,僕たち学部生の島から離れた位置にある院生の先輩の席へ振り向く.
「おはよう,宇崎!」

 やたらとハイテンションで返事を返してくる香川先輩,やっと声をかけてもらえたことが嬉しかったのだろうか,その瞳はきらきらと期待のまなざしで輝いていた.
香川先輩はこの研究室唯一の院生である.成績優秀,高身長で綺麗な顔立ちのなんともふざけたプロフィールをお持ちの先輩だ.僕がみずこうに所属していることを友人たちに話すと,いつも香川先輩と一緒であることをうらやましがられる.面倒見も良くてかっこいい,皆があこがれる先輩ということらしい.ああ,僕も今思えば,昔はそう思っていたのだった気がする.
と,言うわけで,僕はもうこの人を先輩とは思っていない.
「挨拶とか,どうでもいいよ! とりあえず,炬燵から出てこい! というかなんで研究室のど真ん中に炬燵があるの? なに? そのミカン.うまそうだし.じゃなくて,炬燵もそうだし,まず服を着ろ! 暖かいのはわかったから服を着てください,話はそれからだぁあ!!」
 僕は今日も先輩の自由に振り回される.卒論も大事だけど,僕はつっこみにも命をかける.それが,精一杯この研究室で頑張るということだ.
「おい,原咲も入ろうとするな.てか,先輩が裸なのはお前的にアリなの? 女子としてどうなのよ,それ」
 こんな感じで,みずこうの一日は始まる.学校一自由な先輩を中心に,ゆるく,たまに真面目に,そして好き勝手に,僕たちは学生生活を謳歌する.悪の組織も,世界の危機も,シリアスな事件も,胸がキュンとなるラブシーンも,なにもない,僕たちの日々を今日も...

 はい皆さんご一緒に,『そつろん!』
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【2012/01/09 20:41】 | そつろん! | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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