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そつぎょう!
 今が終わる。
 今が世界の真ん中だ。
 あふれるほどの過去の思い出。すがすがしい日々の記憶。
 あふれるほどの未来への期待。すがすがしい日々への羨望。
 そして、その真ん中に立つ、今。
 その今が終わろうとしている。

「卒業生、退場」
 教諭の声が、僕たちの頭からあふれ出した思い出が充満している体育館に響く。
 ブラスバンド部によってアレンジされた、いきものがかりのありがとうが流れ始める
 拍手の音がそれを追い、みるみる数を増していく。僕たちを見送る空気に体育館が満ちていく。
 練習通りの手順を踏んで最前列の級友たちが一斉に立ち上がった。一礼をして、ありがとうございましたと、告げる。叫ぶように、心残りの内容に、思い思いに、想い入れ深く、その言葉を告げると、規則正しく通路へと歩きだし、退場への道を行く。その道を歩くことになるのは、一生で一度きり、最初で最後の道なのだ。
 次々と前に並ぶ生徒たちが減っていく。
 涙を流していたり、周りを伺っていたり、何かを思いふけっていたり、笑っていたり、それぞれ思い思いに卒業式を終えていく。
「ありがとうございました」
 僕の前の列の生徒たちが、礼をして、退場していく。次は、僕の列の番だ。
いこう。
 僕は同じ列の皆にタイミングを合わせて立ち上がる。同じように礼をして、同じように退場の道を進む。
 拍手の音、誰かの声、感極まって音のずれるバックグラウンドミュージック、うるさいくらいに響くその音は、どこかふわふわとしていて、すごく遠くから聞こえてきているような気分になる。
 足元がおぼつかない。今自分がどんな顔をしているのかがわからない。
 何を想えばいいのだろうか。何を残せばいいのだろうか。
 なにも、わからなかった。

 ああ。
 終わるのか。

 それだけが、僕の思考を支配する。
 先に行くよ、そう残りのクラスメイトたちに、目配せをして僕は、花道を歩いて行った。
 紅白の幕に囲まれた体育館を出ると、さっきまで大音量で聞こえていた、見送りの音たちが遠くなる。
 
 体育館の前で集まっていた皆のもとへと駆け寄り、ハイタッチを交わし、そのまま涙でいっぱいの表情を笑い合う。
「そういう、お前が1番っ泣いてるだろうが」
「うるせぇ」
 なるべく大きな声を出す。大きな声で、分かち合う。
 僕たちはここにいるんだ、と言い聞かせるように。大きな声を出して、確かめ合う。

「ほら、いったん教室に戻れよ、お前ら」
 体育館前で余韻を噛み締めていた僕たちを急かして、体育館から出てきた目の赤い先生たちがそう言う。
 皆、同様に惜しんでいる。
 この仲間を、時間を、空気を、最後になるとわかって、だからこそ一秒でも長く共有していたいと思っている。
 そんな風に思える僕たちは幸せて、なんて贅沢なんだろう。どうしようもない、満ちた感情に包まれる。そして同時に、その仲間が、この時間が、これほどにまで愛する空気が、ここで終わることに、どうしようもなく苦しくなる。

 僕の生活は充実していたのだろうか?
 卒業式の直前、終わりが近づいていることを実感し始めた時、僕はそんなことを真剣に考えるようになった。
 夜寝る前、学校帰り、1人の時、ふとした瞬間にその疑問は僕を襲い、そして不安にさせた。

 僕は充実していたのか?
 楽しみ切ったと言えるのか?

 そしてそんなことを考えた時には、必ず心の奥の方がムズムズする。
 
 何かをしなくちゃいけない。なにかをのこさなくちゃいけない。
 なにをすればいいのか、どうすればこの思いは意味を持つのか、まったくわからないのだけど、何かをしなくちゃいけないような気がしてくる。
 このままで終われない気分になる。

 でも、そんなことを考えたり、悩んだり、ふと忘れたりしながら、迎えた今日に僕は贅沢だと感じている。
 この仲間たちとの空気に満足している。
 きっとこんなものなのだ。
 これでいいんだ。
 考え過ぎて、悩み過ぎるためには僕の頭はまだまだ成長が足りない。17や18年しか生きていない、僕の不完全な人間にはこれで充分だ。

 すぐに次の新しい生活が始まる。
 そこで僕はやりたいことをやりたいだけやろう。
 やりたいだけやって、充実させて、まるで漫画の主人公のような日々を送ろう。
 そして、ここで出来なかった何かをやり遂げるんだ。
 いつか、その何かが、どういうものだったのか、なんの意味があったのか、どれほど素晴らしいものだったのか、をここの皆と分かち合える日が、きっと来る。
 それでいいんだ。それだけを祈りながら、僕たちは、さようならを言い合う。
 また明日はもう言えない。
 今日という、3月9日は終わっていく。







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【2013/03/09 18:16】 | 日記 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
No title
二つともイイな。
【2013/03/13 20:08】 URL | 1101 #-[ 編集] | page top↑
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